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 政府は1982年に 「2007年頃に医師が過剰になる」 として、医師数の抑制を閣議決定しました。
 現在、医師不足が大きな問題となっていますが、OECDの医師数の平均と比べると日本の医師数は12万人も不足しているのです。
 しかし政府は、またしても 「2022年には医師は充足する見通し」 として、積極的に医師を増やそうとはしていません。
 理由は、「医師が増えると医療費が増える」 からです。おかしいと思いませんか?
 日本医療労働組合連合会が病院に勤務する医師を対象に行った調査によると、3割の医師が 「過労死ライン」 である月80時間以上の時間外労働を行っている実態が明らかとなりました。
 また、7割を超える意思が宿直と日勤を合わせた32時間連続の勤務を月に3回も行っていることも明らかになりました。とりわけ、医師不足が深刻であるとされる小児科や産科の医師の勤務は過酷で、次々に医師がやめて診療停止に追い込まれる病院が続出しています。
 患者が安心・安全な医療を受けられるようにするために、早急な対策が必要です。
国公立病院への独立採算制の押し付けをやめ、産科・小児科をはじめ地域医療での役割が果たせるようにする。
医師数をOECD諸国平均水準まで増やす。削減した国立大学医学部の定員をもとにもどす。
女性医師が働きやすい労働環境をつくる。
産科・小児科の診療報酬を緊急に引き上げる。
看護師・助産師などを増員し、医師の過重負担を軽減する。
医療事故の原因を客観的に究明する第三者機関や無過失補償制度を創設する。
以上の施策実行のために、医療費総枠(診療報酬)を引き上げる。
普通処置
知覚過敏処置
抜歯
咬合採得・歯冠修復物
硬質レジンジャケット冠
16点
40点・50点
460点
14点
750点
1977年より29年間
1985年より21年間
1985年より21年間
1978年より28年間
1978年より28年間
さらに新規技術の保険導入は過去30年間ほとんどなし
国保税滞納のため保険証なし。痛みがあり周囲からは
※大阪市 夫婦・子ども2人の世帯
受診を勧められていたが、
市販薬で対応。我慢できなくなり救急車で入院。娘さんがありったけのお金1万円を持って市役所へ行き短期保険証をもらってきたが、手当てできる状況でなく翌朝亡くなった。 47歳・女性(子宮癌)
(注)政府は患者さんなどの運動に押されて4月から制限緩和を行いましたが、日数制限そのものの廃止は拒んでいます。
 政府は、「骨太方針」で今後5年間で国の社会保障予算1兆1千億円の削減を打ち出しています。
 今年度予算では2,200億円を削減、雇用保険の改悪と生活保護の母子加算廃止などで捻出しました。
08年4月〜
●70歳〜74歳の窓口負担が1割から2割に
●75歳以上の全員から保険料撤収
●別建て診療報酬で75歳以上の医療に制限
●65〜74歳の国保料を年金から天引き
保険免責制(一定額までは医療保険から給付せず、実質4割以上の負担に)
混合診療の全面解禁(良い医療は医療保険でなく個人負担で)
風邪薬やビタミン剤など市販類似薬は保険給付外に

(年は法律の成立年 当時の与党はすべて法案に賛成)
竹下内閣
羽田内閣
村山内閣 
橋本内閣 
小渕内閣 
小泉内閣 
 自民
 自民・共産を
 のぞく諸党派(※注1)
 自民・社会・
 さきがけ連立
 自民・社会・
 さきがけ連立(※注3)
 自民・自由・
 公明連立
 自民・
 公明連立
 「高齢化社会のため」と消費税3%導入(1988年)
 入院給食の有料化(1994年)
 消費税5%へ増税(1995年)
 基礎年金支給を65歳に繰り延べ(1994年)※注2
 健保本人2割負担、難病患者の自己負担導入(1997年)
 国保料滞納者に対し資格証発行を義務化(1997年)
 報酬比例部分の年金支給65歳に繰り延べ
 生涯年金額を1,000万円削減(2000年)
 健保本人3割負担、高齢者負担引き上げ(2002年)
 所得税、住民税の定率減税廃止で1.7兆円増税(2006年) 
注1: 細川内閣に引き続き社会党、新政党、公明党、日本新党、民社党、自由党、改革の会、閣外協力として新党さきがけにより羽田孜を首班指名。組閣直前に社会党が連立政権からの離脱。入院給食の有料化には、自民党、社会党も賛成。
注2: 新進党も賛成
注3: 1996年11月7日の発足の第2次橋本内閣より、社民党、新党さきがけは閣外協力。1997年の健保法改悪には、太陽党も賛成
 日本は医療にお金をかけていません。これは国の政策によるもので、低医療費政策(医療費抑制政策)といわれています。
 主な先進国ではGDP比で約10%のお金を医療に使っていますが、日本は8.0%とG7の中で最低の水準です。
 いまイギリスでは、保守党政権によって荒廃した医療を、医療費の増額によって立て直そうとしています。医療費抑制政策の結果、イギリスでは、救急入院に3時間、風邪で受診するのに2日、手術に1年以上も待たされる、医師・看護師不足から医療事故が続発するなどという状態が慢性化してしまいました。
 世論の批判を受け、労働党政権は2000年から医療費抑制政策をやめました。今の日本の医療は「医療崩壊」といわれる状況は、過去のイギリスの状況
に似かよってきています。G7の中で最低だったイギリスの医療費は日本を追い抜きました。日本もイギリスと同様に医療費(診療報酬)を増額するべきです。
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