No.387  2004年6月号
最近、新聞紙上でも特集されていて、一般の人たちにも創傷治療に対する関心が高まっています。
 時期を同じくして福島生協病院でも、慣習的に行われてきた消毒薬による傷の消毒やガーゼの使用を全面
的に変更させつつあります。消毒薬の傷への悪影響や手術創の消毒の意味について科学的な見地から全面的に見直そうとしています。そのポイントは以下の二点に絞られます。
◆キズは閉鎖療法で、痛みか少なく、早く治ります。
 これまで多くの病院では、皮膚の外傷処置に、イソジンをはじめ消毒薬を傷口に塗って消毒をしていました。しかしこれは痛いだけでなく、組織を傷害し、治るのを妨害するということがわかっています。
 そして、その上にガーゼを置くことは、細胞成長因子などが含まれている創の滲出液を吸い取って、創傷治癒を邪魔してしまいます。おまけにガーゼが創にはりついて、はがすと痛くてせっかく治ってきた創口がまたはがされて出直しということになります。したがって現在病院ではできるだけ消毒やガーゼを使用しない創傷処置にしています。
 創をよく水で洗い、必要があれぱ局所麻酔をして異物を除去したりしたのち、各種の創傷被覆材でおおう方法です。この方法で行うと創の痛みが非常に少なく、キズが治っていくのに最適な環境が作られ早く治ります。

◆手街の縫合創の消毒は有害で無意味
 以前は手術後の縫合した創も消毒していました。しかし、最近では縫合後の消毒は四十八時間以内では創傷治癒に悪影響を及ぼし、それ以後は傷口が完全にふさがっており、また、皮膚を消毒しても一時間もすればすぐにばい菌が広がってしまいます。消毒も滅菌ガーゼで覆うことも意味がないので行わないようにしています。そして、その他の条件がよければシャワーも可能としています。
 ただし、処量の内容やキズの状態によっては消毒やガーゼが必要な場合もありますので、すべてこうだとは言い切れませんが、創傷処置の基本はそれを使わないで行っています。
 これまでの方法とまったく違うので戸惑うかもしれませんが、新しく、患者さんにもっとも優しい創傷治療をご紹介しました。

田代忠晴医師
1981年3月 広島大学医学部卒
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